「海外の名曲外国曲×日本語詞」の美しい叙情歌10選             〜叙情と色彩の開花〜

海外の美しいメロディと、日本の美しい言葉が出会って生まれた奇跡のような曲の数々。原曲の歌詞をそのまま翻訳したものではありません。日本の詩人が日本の風景や情緒に合わせて全く新しく美しい日本語の歌詞を書き下ろしたものです。明治から大正、昭和初期にかけて、多くの文豪や訳詞家たちが海外の美しいメロディに一級品の日本語を乗せました 原曲の爽やかさや哀愁を活かしつつ、日本の自然(四季、風、月など)や、日本人が共感する「日本の風景」「郷愁」などを見事に表現した歌は、魅力的で独特の深みがあり、時代を越えて日本人の心に染み込み、日本の歌として愛され定着して参りました。

●著作権があり、ここに掲載出来ない曲もたくさんありますが、パブリックドメインの10曲をご紹介します。

1.庭の千草 

―夢と現実の境に浮かぶ、優しい光

©生成AIによるイメージ画像

津川主一(1896―1971) 里見 義 作詞 ムーア 作曲

晩秋の静けさに、最後まで咲く白菊。その白さに、

凜とした生命の余韻を見る。

枯れゆく草木の褐色の中に浮かぶ、清らかな白。

華やかさではなく、静けさの中で際立つ「白菊の白」です。

外国の薔薇の歌が日本で白菊の情景をまとった、

その美しい変容を色彩で表しました。

歌詞

庭の千草も 虫の音も

枯れて淋しく なりにけり

ああ、白菊 ああ、白菊

ひとり遅れて 咲きにけり

露にたわむや 菊の花

霜におごるや 菊の花

ああ、あわれあわれ ああ、白菊

2. 野ばら

一輪の花が、小さな物語になる

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原題
Heidenröslein(野ばら)

原詩
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/ドイツ

作曲
ハインリヒ・ウェルナー/ドイツ
※同じゲーテの詩にはシューベルトをはじめ多数の作曲家が曲を付けています。

歌詞(日本語訳詞)
近藤朔風(1880―1915)/青森県生まれ。

童は見たり 野中の薔薇
清らに咲ける その色愛でつ
飽かずながむ 紅におう
野中の薔薇

曲の物語
少年が野に咲く一輪のばらを見つけます。

可憐で美しいばら。しかし少年が折ろうとすると、

ばらは「あなたを刺します」と抵抗する――。

短い詩の中に、美しさ、生命、愛、抵抗、

はかなさが凝縮されています。

近藤朔風の日本語は、ゲーテの詩を日本人の耳に

自然に響く言葉へと移し替えました。

3. 夢路より(夢見る人)

―夢と現実の境に浮かぶ、優しい光

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原題
Beautiful Dreamer

作詞・作曲
スティーブン・フォスター/アメリカ

歌詞(日本語訳詞)
津川主一(1896―1971)

  曲の物語
 フォスター晩年を代表する歌曲です。

 眠る人へ静かに語りかけるような旋律には、

 夢、月明かり、夜、愛する人への思いが漂います。

 日本では津川主一の「夢路より帰りて……」

 で始まる日本語詞が広く親しまれました。

 ※津川主一の日本語詞は現在も著作権保護期間に

 あるため、百彩浪漫では歌詞全文を掲載せず、

  作品の内容のみをご紹介します。

4. 星の界(ほしのよ)

―星を見上げ、人間の知性は宇宙へ向かう

©生成AIによるイメージ画像

原曲
賛美歌「What a Friend We Have in Jesus(いつくしみ深き)」

として広く知られる旋律。

作曲
チャールズ・C・コンヴァース/アメリカ

日本語作詞
杉谷代水(1874―1914)/鳥取県生まれ。

1910年『教科統合中学唱歌 第二巻』掲載。

歌詞

月なきみ空に きらめく光
嗚呼その星影 希望のすがた
人智は果なし 無窮のをちに
いざ其星の界 きはめも行かん

雲なきみ空に 横たふ光
あゝ洋々たる 銀河の流れ
仰ぎて眺むる 萬里のあなた
いざ棹させよや 窮理の船に

5. 旅愁

―秋の夜、遠い故郷へ帰ってゆく心

原題
Dreaming of Home and Mother

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作曲
ジョン・P・オードウェイ/アメリカ

日本語詞
犬童球渓(1884―1943)/熊本県人吉生まれ。

1907年『中等教育唱歌集』掲載。

歌詞

更け行く秋の夜 旅の空の
わびしき思ひに ひとりなやむ
恋しやふるさと なつかし父母
夢路にたどるは 故郷の家路

窓うつ嵐に 夢もやぶれ
はるけき彼方に 心運ぶ
恋しやふるさと 懐かし父母
思ひに浮ぶは 杜の木ずゑ

曲の物語
原曲も故郷と母を思う歌ですが、犬童球渓は

そこに「更け行く秋の夜」という日本人の

心に響く季節を置きました。

秋の夜、旅先の窓を打つ風。

そこから思いは故郷へ、父母へ、森の梢へと

帰ってゆきます。

6. 秋の夜半

―ウェーバーの旋律が、日本の月夜を奏でる

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原曲
オペラ『魔弾の射手』序曲の旋律

作曲
カール・マリア・フォン・ウェーバー/ドイツ

日本語作詞
佐木信綱(1872―1963)/三重県生まれ。

1910年発表。

曲の物語
ドイツ・ロマン派オペラの旋律に、佐佐木信綱は

日本の澄み切った秋の夜を描きました。

白い月、雁、静寂、そして物思い。

ここでも旋律は海を越え、まったく異なる風景を

まといます。

それは翻訳ではなく「音楽による文化の再創造」

と呼びたくなる出会いです。

7. 故郷の空

―スコットランドの旋律に、日本の郷愁が重なる

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原曲
Comin’ Thro’ the Rye

原曲
スコットランド民謡

日本語作詞
大和田建樹(1857―1910)/愛媛県生まれ。

1888年『明治唱歌 第一集』掲載。

歌詞

夕空はれて 秋風吹き
月影落ちて 鈴虫なく
思へば遠し 故郷の空
あゝわが父母 いかにおはす

すみゆく水に 秋萩たれ
玉なす露は すすきにみつ
思へば似たり 故郷の野辺
あゝわが兄弟 たれと遊ぶ

曲の物語
原曲の恋の歌をそのまま翻訳したものでは

ありません。

大和田建樹が描いたのは、夕空、秋風、月影、

鈴虫、秋萩、すすき――そして遠く離れた

父母や兄弟です。

スコットランドの旋律が、日本の秋そのもの

へと変貌した代表例でしょう。

8. 故郷を離るる歌

―「さらば故郷」庭の花々にも別れを告げて

©生成AIによるイメージ画像

原曲
ドイツ民謡。原曲の特定については複数の説があります。

日本語詞
吉丸一昌(1873―1916)/大分県臼杵生まれ。

1913年『新作唱歌 第五集』掲載。

歌詞

園の小百合 撫子
垣根の千草
今日は汝をながむる
終りの日なり
思へば涙 膝をひたす
さらば故郷
さらば故郷
故郷さらば

9. おお牧場はみどり 

―生命の息吹を感じる、美しい緑の大地

©生成AIによるイメージ画像

原曲
チェコスロバキア地方に伝わる民謡。スロバキア

民謡との関連も指摘されています。

日本語詞
中田羽後(1896―1974)

日本では1950年代から広まり、1961年にはNHK

「みんなのうた」の初期放送曲となりました。

曲の物語
この10曲の中では時代の新しい作品です。

雪が解け、水となり、山から谷へ流れ、野や畑を潤す。

日本語詞には、自然の循環と、そこで働く人々の

生命力があります。

※中田羽後の日本語詞は現在も著作権保護期間に あるため、

歌詞全文は掲載しません。

10. 蛍の光  

―友情の日々を振り返り、互いを想いあう

©生成AIによるイメージ画像

原曲
Auld Lang Syne

原曲
スコットランド民謡

日本語作詞
稲垣千頴(1845―1913) 1881年『小学唱歌集 初編』掲載

歌詞

蛍の光 窓の雪
書よむ月日 重ねつつ
いつしか年も すぎの戸を
開けてぞ今朝は 別れゆく

とまるも行くも 限りとて
かたみに思ふ ちよろづの
心の端を ひとことに
さきくとばかり 歌ふなり

曲の物語
スコットランドでは、旧友との友情や過ぎ去った

日々を懐かしむ歌として知られる旋律。

日本では「蛍の光、窓の雪」という、学びの日々と

別れを描く歌になりました。

異国の友情の歌が、日本では卒業や旅立ちの象徴と

なったのです。

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